交通事故では被害者が無傷だと思っても慰謝料を受け取れることがある

交通事故は誰にでも不意に起こることがあるものです。特に被害者になってしまった時はしっかりした対応を取らないといけません。意外なようですが、例えば自動車を運転していて加害者になった場合、任意保険にきちんと入っていれば、対応の多くは保険会社がやってくれます。

しかし、歩行者の立場で被害者になると、まず自分がしっかり対応しないといけないのです。では、その内容を見ていきましょう。

→交通事故の被害者になった場合、示談しないという選択肢はあるのか

その場で痛くなくても必ず警察に報告して病院を受診すること

例えば、歩道を歩いていた時に駐車場から出てきた自動車と接触してしまい、尻餅をついたとしましょう。恥ずかしいのですぐに立ち上がって「大丈夫です」などと言いつつ、その場を離れたくなるかも知れません。しかし、それは最もやってはいけないことなのです。

人間の身体は非常事態を認識するとアドレナリンというホルモンが出て、痛みを感じ難くさせる働きがあります。ですから、その時は痛くなくても後で痛みが出てきたり、ひどい場合、後から骨折に気づいたりすることさえあるのです。

歩行者が、自動車やバイクとの事故にあった場合、歩行者側に信号無視や歩行者横断禁止場所の横断といった過失がない限り、原則として自動車やバイクの責任が100%であると認められます。ですから歩道を歩いていて車と接触したなどの場合、「自分も悪かった」と思う必要はありません。

その場では痛くなくても警察を呼び、必ず病院を受診して下さい。慰謝料もそうですが、警察に届けを出していないと治療費の請求を行うことも難しくなります。特に年配者は遠慮してしまうことがありますし、子供の場合叱られるという恐怖感からその場を早く離れたがります。

そうした場合でも、後から警察に届けを出すことは可能です。本来は加害者側も警察に届ける義務がありますので、相手を特定できなくても車の色や運転手の特徴など、分かる範囲の情報を警察に届け出て下さい。その際、医師の診断書があると良いです。

けがで通院した場合でも慰謝料の対象になる

慰謝料には後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の他、もっとも件数が多いであろう入通院慰謝料というものがあります。例えば、年配の人が歩道上や横断歩道上で車と接触して尻餅をつき、背骨を圧迫骨折してしまい2週間入院、6週間通院の全治2か月になったとしましょう。

事故の時にその事に気づかず、後から腰痛に悩まされて受診、骨折が分かったとしても、日数を経過していると因果関係がよくわからないかも知れません。もちろん後から届けを出して請求できるケースもありますが、補償を減額される可能性は否定できません。

一方、その場では痛くなくても念のため受診し、レントゲン検査で骨折が分かったとしましょう。この場合、任意保険基準の相場からでも30万円あまりの慰謝料が受け取れ、弁護士を間に立てて請求すればさらに高額の慰謝料を受け取れるかも知れないのです。

もちろん治療費も全額請求できます。

治療費も慰謝料も被害者の権利だが不正を行ってはいけない

このように、歩行者と自動車やバイクとの事故の場合、歩行者に大きな過失がない限り、事故の責任の大半または全部が自動車やバイクの方にかかってきます。歩行者に大きな過失がなくて被害者となった場合、事故の大きさやその他のシチュエーションに関わらず、必ず警察に届け出て病院を受診し、必要な請求を行って下さい。

もちろん歩行者に大きな過失があっても、車やバイクの運転手の過失がゼロになることはほとんどないでしょう。つまり、どんな事故であっても届け出は必須であるということです。一方、実際の被害を過大に申告するようなことを行ってはいけません。

すでに痛みがなくなっているのに、痛みを訴え続けて受診日数を増やし慰謝料の増額を狙うなどの不正行為は、必ず発覚するものです。保険会社は診断書を書いた医師にも、勤務先や関係先にも調査を入れて不正請求がないかという調査を行うようです。

最悪の場合、支払い済みの保険金の返還を請求された上で、刑事事件として訴えられるかも知れません。

加害者が自転車でも賠償責任は同じになるケースが少なくない

自転車にも損害賠償保険の加入を義務付ける自治体が増えてきています。

2019年10月現在、9都府県と2政令指定都市で義務化されており、その他にも努力義務を制定している自治体も多いです。これは万が一の事故の場合に、自動車などと同じような賠償能力を持たせるためです。

法律では自転車は軽車両というジャンルの車両ですから、事故になった場合責任の大きさが自動車と同レベルと言えます。自転車とぶつかった場合でも、警察に連絡して病院を受診しないといけないことに変わりはありません。

自動車と違って自転車にはナンバープレートがありませんので、スマホで写真を撮るなど、加害者が逃げてしまった時のための自衛は行っておくべきでしょう。また、自転車に乗る人は、自分の住んでいる地域の義務化が遅れていても保険の加入をおすすめします。

義務化されていなくても万が一の際の賠償責任は全国共通になるからです。さらに、例えば愛知県は義務化が行われていませんが、名古屋市では義務化されています。名古屋近郊に住んでいる場合、住所地では義務化されていなくても、名古屋市を通行する場合には保険が必要となるので気をつけましょう。

歩行者の大きな過失は信号無視と横断禁止場所での横断

酔っ払って車道で寝ていて車に轢かれたなどというケースは論外ですが、意外に違法な通行をしている歩行者は少なくありません。例えば、狭い交差点でスマホを見ながら歩いていて、歩行者用信号が赤であるのに気づかず渡ったと言うようなケースです。

もしこの状態で自動車に轢かれた場合、歩行者側にも過失が認められ、治療費や慰謝料が減額されるでしょう。また、歩行者横断禁止の標識が立っている場所で、横断歩道のないところを渡った場合、これも大きな過失になり得ます。

そしてさらに注意してほしいのは「対面する信号が赤の時に交差点に進入すると信号無視になる」と言うことです。例えば、目の前の信号が赤の場合で、交差点を渡るのではなく小回りに右折した場合を考えて下さい。狭い道同士の交差点の場合、道の右側を歩いていて交差点で右に曲がると、右側から走ってきた車からは歩行者が突然現れたように見えます。

広い道なら大丈夫でしょうが、狭い道ではぶつかってしまうかも知れません。この場合でも歩行者が信号無視して交差点に入ってきたとみなされる可能性があります。

ペットや持ち物の損害には慰謝料が出ないことが大半になる

慰謝料は原則として人体の被害に対して支払われます。そのため散歩の途中の事故でペットが死んでしまったとか、持っていた物が壊れてしまったとかのケースでは、実損害は保険から補償される可能性が高いものの、慰謝料が支払われるケースはまれです。

もちろん裁判を起こして、ペットや持ち物の損害に特別な事情が認められれば、慰謝料が支払われる可能性はあります。それでも判例を見ると、かなり低い金額になっているようです。